新たに保険適用となった白い被せ物「CAD/CAM冠」について

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新たに保険適用となった白い被せ物「CAD/CAM冠」について

これまでは、小臼歯部で保険適用の被せ物は、白いプラスチックか銀歯でした。

2014年に、新たに保険適用となった白い被せ物「CAD/CAM冠」は、従来の白い被せ物と比べてどう変わったのか、メリットなどについてご説明します。

保険適用の被せ物について

保険適用の被せ物

虫歯の範囲が広い、または深く神経まで達していた場合、神経を取り除いて根の中の細菌を取り除く根管治療を行います。

根の中が綺麗になり、最終的な薬を詰めてフタをした後、型取りを行って被せ物を作成します。前歯を含めた従来の保険適用の被せ物については以下のとおりです。

前装冠

犬歯までの前歯に使用する白い被せ物です。歯の表側がプラスチック、歯の裏側と内部が金属で作られています。

見た目は白く審美性は悪くありませんが、プラスチックは細かな傷が付きやすく、黄ばんでくるなど経年劣化とともに変色が出てきます。

また金属を使用しているため、金属アレルギーをお持ちの方はアレルギーが出る恐れがあります。

硬質レジンジャケット冠

小臼歯部に使用できる、保険の白い被せ物です。素材はレジンと呼ばれるプラスチックで金属は使われておらず、金属アレルギーの心配はありません。

周りの歯とある程度調和したシェード(色味)で、審美性は大きな問題はありません。しかし強度に問題があり、非常に割れやすいというデメリットがあります。

銀歯

小臼歯および大臼歯(奥歯)に使用する保険の被せ物は、銀色の金属素材のものになります。強度は高いですが、審美性に劣ること、また強度が高いゆえ対合の歯を痛めてしまう可能性があります。

CAD/CAM冠とは

2014年、新たに保険適用となった「CAD/CAM冠(キャドキャムかん)」は、小臼歯に使用できる新しい被せ物です。被せ物は、これまでは歯科技工士が、型取りをされたものに石膏を流した模型にロウを盛り上げて、一つずつ手作業で作っていました。

近年、歯科業界でもデジタル化へと変革が進んでいます。型取りされたものをコンピュータで読み込んで歯の形を設計し、さらにコンピュータ制御によってレジンのブロックを切削機械が歯の形に削ります。つまり、コンピュータ制御によって作られた被せ物が「CAD/CAM冠」です。

これまで被せ物の作製は全て、歯科技工士の手で作られてきましたが、被せ物の設計から作製までコンピュータ制御で行われるようになったことから、歯科技工物の品質が一定になり、作業の効率化も図られるようになりました。

海外では30年ほど前から取り入れられており、のちに日本でも保険外診療として認可されていましたが、自費治療のため高額な費用が必要となり、それほど一般的ではありませんでした。
2014年、保険診療の改正が行われたときにこの「CAD/CAM冠」が導入されたのです。

保険適用のCAD/CAM冠の素材と硬質レジンジャケット冠との比較

同じ小臼歯に使用する保険適用の白い被せ物ですが、CAD/CAM冠と従来の硬質レジンジャケット冠(HJC)と比較すると、様々な面で違いが出てきます。

最も大きな違いは、素材です。HJCは、素材がプラスチックであるレジンのみであるのに対し、保険適用のCAD/CAM冠は、従来のレジンにセラミック(陶器)の粒子を配合したハイブリッドレジンであることです。

セラミックは強度に優れているため、強度に不安があるレジンにセラミック粒子を配合することにより、HJCに比べて強度を安定させていることが大きな特徴です。

審美性においても、レジンのみを使用したHJCに比べ、セラミックを配合したハイブリッドレジンは透明感に優れています。

耐久性においても、プラスチックは年数が経つとともに汚れが付着して黄ばんできますが、セラミック配合により汚れが付きにくく、HJCに比べて劣化は緩やかなことも、ハイブリッドレジンならではの特徴と言えるでしょう。

またHJC同様金属素材を一切用いていないため、金属アレルギーの心配がありません。体に優しい素材を使っているため、金属アレルギーの心配がある方でも安心して使うことができます。

土台の歯、対合の歯に優しい

同じ保険適用のものでも銀歯の場合、強度がとても強いという特徴があります。しかし強度が強い反面、土台の歯や噛み合わせる歯に大きな負担がかかります。

銀歯の場合、土台も金属の土台(メタルコア)を使うため、噛んだ時に歯の根に負担がかかり、最悪の場合、根が割れることがあります。

また対合の歯に対しても負担が強いため、対合の歯が削れてしまうなど、健康な歯に負担がかかることも銀歯の大きなデメリットです。

これに対しCAD/CAM冠は土台の歯、対合の歯ともに負担が少なく、歯に優しい素材と言えます。また噛んだ時に顎にかかる負担が少ないことも、CAD/CAM冠の特徴でもあります。

CAD/CAM冠の適応範囲と条件

保険適用となったCAD/CAM冠は、適応範囲が上顎と下顎の第一小臼歯、第二小臼歯の部位(前歯から数えて4番目、5番目の歯)のみ、合計8本まで適用可能です。

それより奥の歯は保険適用の場合、銀歯のみになります。ただし例外として、金属アレルギーがある場合に限り奥歯に適用される場合があります。この場合、皮膚科医などからアレルギー情報の文書を提供することが必要となります。

CAD/CAM冠が適用される歯の条件は、虫歯を削った後の歯がCAD/CAM冠を装着しても問題がないくらい、十分に健康な部分が残っていることです。

セラミック粒子を混ぜ込んであるため強度は強めですが、削る範囲が多く残った歯が少ない場合、CAD/CAM冠にかかる負担が大きくなるため、噛んだ時に割れるリスクが高くなります。

削る範囲が広くなり強度に不安がある場合、保険適用では銀歯になるでしょう。またブリッジとして使うことは強度の問題などから使用することができません。

そして歯周病で歯に動揺が見られるとき、虫歯が大きく被せ物をいれても安定しなさそうなときは、差し歯をまとめて強度を強くする「連冠」という方法を用いることがありますが、CAD/CAM冠では2つの冠を連結する方法は適用できません。

CAD/CAM冠を取り扱っている歯科医院のみ選択が可能

歯科医院

メリットの多いCAD/CAM冠ですが、全ての歯科医院が取り扱っているわけではありません。

厚生労働省が設定した歯科診療施設の条件に合致している歯科医院のみの取り扱いになります。設置基準は以下の3つになります。

①差し歯治療の専門的な知識の保有と、3年以上の歯科治療の経験がある歯科医師
②歯科技工所の設置
③CAD/CAM冠装置の保有

①の歯科医師については、差し歯治療はほぼ日常的に行われる診療内容であり、専門知識を有していると言えます。また研修医や新人歯科医師を除くとほぼ3年以上の歯科治療キャリアを保有していることがほとんどで、基準から外れることはまずないと考えられるでしょう。

②の歯科技工所は、歯科医院によっては歯科技工士がおらず、技工所も設置されていないことがあります。しかし歯科技工物を作製するにあたり、歯科技工所と連携が取れていれば問題はありません。

③については、②と関連しますが、歯科技工所がCAD/CAM装置を保有していることで、問題はクリアできます。

この3つの設置基準条件を満たした上で申請していることで、ほとんどの歯科医院で取り扱いが可能となります。通っている歯科医院がCAD/CAM冠を取り扱っているかどうかは歯科医院にお尋ねください。

CAD/CAM冠の特徴を知り、自分の状態にあった治療を

自然な見た目と、従来のレジンのみを使用したものに比べて強度が優れていること、金属を使わず体に優しい素材を使ったCAD/CAM冠の特徴についてご紹介しました。

保険適用が可能となり、メリットの多いCAD/CAM冠ですが、適用条件が限られているなどデメリットも存在します。

ご自身の歯の状態によっては適用できない場合もありますので、かかりつけの歯科医師とよく相談してください。

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麻美 とうこ

歯科助手
略歴・3件の歯科医院にて歯科助手、受付業務を行っている。 歯に関する知識を日々習得中
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