口は絶えずいろいろな刺激をうけ、ある程度の過酷な環境下に耐えていますが、強い刺激や慢性的な刺激が続くと、細胞や組織が正常に維持できなくなり、その結果、口の病気へと発展していきます。
また、口は全身の影響が出やすい器官でもあるので、場合によっては医科との連携も必要となります。
口内環境を正常化するための基本はプラークコントロールです。
人によって、歯周ポケットが深かったり、歯の並びが複雑で汚れが取り切れない状況の人、中には、体や手が不自由で自分で磨くことが出来ない方もいらっしゃるかと思います。
いろいろな状況の中で専門的アプローチを介在させながら、日々の口内環境の正常化に努めることが大事になります。
今回は口のトラブル全般について詳しく紹介していきます。
目次
口にできる症状別トラブル・口の粘膜がヒリヒリする、痛い!
口腔カンジダ症
おもに原因菌であるカンジダ・アルビカンスという真菌(カビ)の増殖によって起こる病気です。
カビ?と驚くかもしれませんが、カンジタ菌は口腔常在菌の一つで、誰の口の中にでもいる菌です。
口腔カンジダ症はいくつも種類があり、今回はその中で白苔をつくるカンジダ症と赤い発赤と痛みを生じるカンジダ症を紹介します。
偽膜性カンジダ症
(舌にできた舌苔)
・特徴
口腔粘膜表面に点状、線状、斑紋状の白苔を形成します。
急性型と慢性型があり急性型は白苔をピンセットやガーゼでぬぐいさすことができます。
好発部位は口腔の頬粘膜、舌、口唇粘膜です。
高齢者や乳幼児に多く、主な原因は生体の免疫力低下や唾液量の減少です。
生体の免疫力低下や唾液量の減少により口腔内の微生物感のバランスが崩れ、口腔常在菌であるカンジダ菌の増殖が見られるためと言われています。
これらの要因としては、
①薬の長期服用(副腎皮質ステロイド剤や抗アレルギー薬、免疫抑制薬などの長期服用)
②全身疾患(糖尿病、放射線治療法、ステロイド薬服用等)
③最近では免疫抑制状態であるAIDSを発症した若い人にも見られることがあります。
萎縮性カンジダ症(紅斑性カンジダ症)
・特徴
粘膜の萎縮によって粘膜下の血管が透けて粘膜の発赤がみられ痛みを伴います。
舌にできた場合は舌表面にある舌乳頭が小さくなり、本来ざらざらしているところがやや平らになり、ところどころに発赤がみられます。
好発部位は頬粘膜、舌、口唇、口蓋、咽頭入れ歯の清掃不良や口腔乾燥症(ドライマウス)における口腔カンジダ症の多くは萎縮性カンジダ症です。
・検査
病変を顕微鏡検査、培養等によって確定診断をします。
治療法(偽膜性・萎縮性)はまずは誘因を除去します。基礎疾患があればその治療を行い、抗真菌薬を症状に応じて局所的もしくは全身的に行います。
急性型を放置し、慢性型になってしまうと、カンジダ菌の増殖に伴い粘膜は厚さを増すため、薬剤が浸透しづらくなります。
治療は早く行ったほうが症状は軽くすむため、早めの受診をおすすめします。
口腔扁平苔癬(こうくうへんぺいたいせん)
口腔粘膜にできる慢性の角化性病変です。口腔以外にも全身の皮膚にも生じる病気です。
特徴は、粘膜に白いレース状や網目状の模様をつくり周囲に発赤が生じます。
発赤部位は粘膜が薄く、潰瘍やびらんを形成する場合があり、痛みが生じやすいです。
そして白色部位はぬぐってもぬぐいさることは出来ません。好発部位は頬粘膜(両側性が多い)、下唇、舌で、中年以上の女性に多いです。
原因は不明ですが、細菌、ウイルス感染説、アレルギー(歯科用金属アレルギー)や遺伝的素因、ストレス、薬物、代謝障害があるといわれています。
そして、扁平苔癬の数%の人が癌化するとされています。
そのため、診断では専門医による病理組織学検査が必要で、専門的な診断が必要です。金属アレルギーが関与している場合はパッチテストが行われることもあります。
・治療法
副腎皮質ホルモン剤軟膏塗布によって症状を緩和させますが、根本的に治癒することはありません。
白板症
こすってもぬぐいさることができない白色の板状、斑状の角化性病変です。
世界保健機関(WHO)によると、他のいかなる疾患としても特徴づけられない著明な白色の口腔粘膜病(WHO)と定義されています。
好発部位は下顎歯肉、舌、頬粘膜、の順です。
50~70代の男性に多く約5~10%は癌化するといわれているので、診断で専門医による病理組織学検査が必要で専門的な診断が必要です。
はっきりとした原因は不明ですが、慢性刺激(喫煙、アルコール、不適当な義歯、補綴物、歯の鋭利、咬頬癖等)や内分泌異常、ビタミンA欠乏等が考えられています。
診断で口腔癌が陰性であれば、まずは考えられる刺激の原因除去に努めます。
白板症を除去することで機能障害を生じる可能性も出てくるので、多くは経過観察を定期的にしていきます。
癌が陽性で、白斑を取り除く手術が必要になります。
治療法は刺激の原因を除去後、長期経過観察や、必要であれば、ビタミンA誘導体の投与、病変粘膜の外科的切除、凍結療法、レーザー治療等を行います。
アフタ性口内炎
口内炎の多くはアフタ性口内炎です。
アフタは口腔粘膜内にできる直径5ミリ程度の円形あるいは類円形の境界がはっきりした白色または灰白色の膜様物(偽膜)に覆われた浅い潰瘍で、周囲は発赤し、痛みを伴います。悪化すると出血を伴います。
1か所に孤立してつくる孤立性アフタと数個のアフタや繰り返し出現する慢性再発性アフタがあります。
またベーチェット病では症状として再発性アフタを伴うことがあります。
大アフタになると、直径10mm近くの大きさになることもあります。
好発部位は頬粘膜、口唇、舌、歯肉です。女性にやや多く、思春期以降に増加する傾向があります。
原因は明確ではありませんが、誘因としては、胃炎、便秘、過労、ストレス、外傷、ホルモン異常に関連があるとされています。
治療は十分な睡眠や栄養補給していれば1週間程度で自然に治ってきますが、副腎ステロイドを含む軟膏や付着薬(アフタッチ)などを使うと痛みが軽減され、治癒も促進されるので、自身で経過をみてもよいですが歯科医院へ足を運ぶのもおすすめです。
疱疹性歯肉口内炎(ヘルペス性歯肉口内炎)
疱疹性歯肉口内炎は単純ヘルペス1型ウイルスの感染によって発症します。
多数の小さな水泡やびらんをつくります。そして水疱はすぐ破れて潰瘍を形成していきます。
この場合、アフタ性口内炎の所見を呈します。そして乳幼児にかかりやすい病気の一つで、乳児がもつ母親の免疫が低下する頃から見られます。
ほとんどの乳幼児の場合、たいていは感染しても無症状で、1割程度の乳幼児に症状が現れるとされています。最近は成人の発症もしばしば確認されています。
単純ヘルペス1型は、飛沫感染(せきやくしゃみなど空気を介在してうつる)または接触感染をします。
大人はたいてい保有しているウイルスなので、乳幼児の感染経路としては母親から一番うつりやすいとされています。とても感染力が強いため、子供とコップの共有や口移しなどはうつる可能性が高まります。
自覚症状が強く、全身倦怠感、2~5日高熱が続き、激しい歯肉炎、多数の小水疱、潰瘍形成から摂食困難になることもありますが通常2~3週間で治癒していきます。
検査はウイルス検査、血液検査等があります。
治療は乳幼児では水分補給や栄養補給をしていきます。
成人では抗ウイルス薬の投与、栄養補給をしていき摂食困難な場合は輸液などを行います。歯科医院の受診をおすすめします。
粘膜がヒリヒリ・痛い症状は専門の機関で診断をしてもらうことが大事になります。
気になることがあれば、まずは歯科医院へ受診しましょう。
口の粘膜がヒリヒリする・痛い!口が乾燥する!
起床時、空腹時、緊張時に一時的に唾液の減少が見られたり、加齢に伴う唾液の減少は生理的な現象なので、心配はありませんが、口が乾いて痛みがでるほどの症状が出る場合は受診をしてみましょう。
口腔乾燥症(ドライマウス)
唾液の分泌が低下して口腔内が乾く疾患です。
唾液の分泌量は1日通常1~1.5ℓです。
唾液は口腔内に存在する菌の増殖を防いだり、口腔内の食べ物残渣を消化器官へ流し、口腔内の停滞を防いだり、食べ物を呑み込みやすくするために、噛んで細かくしたあと、食塊の形成に関わったり等なくてはならないものです。
唾液量が低下することによって、口腔内の粘膜や舌にネバネバ感やヒリヒリ感、さらには食べ物の残骸が停滞しやすく、歯垢の形成による、虫歯の進行のリスクを高め、また口臭の原因にもなります。
口腔粘膜は乾燥し、粘膜は光沢(カピカピな状態)となり、舌では舌表面を覆う舌乳頭が小さくなったり、消失したりするので、平らな舌(カピカピな状態)になります。
そのため、刺激痛や味覚障害が訴えることが多く、重度になると、痛みによる摂食障害や会話がしづらいなどの症状も現れます。
原因は加齢、ストレス、口呼吸、喫煙、唾液腺障害、降圧剤、抗うつ剤、抗パーキンソン剤等の薬の副作用等が挙げられます。
糖尿病、シェーグレン症候群、自律神経失調症などの全身疾患に伴うものが挙げられます。
治療法は生活指導や、消炎作用や抗菌作用のある含嗽剤、人口唾液の使用等があります。
口の中にできもの、傷ができた!
よく臨床でみかける傷やできもの、そして早期発見が鍵となる口腔癌について説明していきたいと思います。
褥瘡性潰瘍(じょくそうせいかいよう)
慢性的な物理的刺激により、その部位に血行不良が生じ、その結果できた潰瘍のことをいいます。
合わない入れ歯を無理に使用していたり、詰め物や被せもの等とがったところが慢性的に粘膜にあたっていると生じてきます。
入れ歯の調整やとがったところを丸めてもらえば1~2週間程で回復していきます。
粘液嚢胞(ねんえきのうほう)
唾液腺の損傷で粘膜に唾液がたまり、膨らみを形成したものをさします。
原因は誤って唇や頬粘膜を咬んだり、唇をかむ癖、爪をかむ癖などの悪習慣等があげられます。
治療法は自然に治ることも稀にありますが、局所麻酔下で外科的に除去することが多いとされています。
口腔癌(こうくうがん)
口腔癌は頬粘膜、歯肉、硬口蓋、舌、口腔底などに生じる口の中にできた悪性腫瘍のことをさします。
癌の進行は極めて早く、癌細胞が隣接組織に浸潤し、リンパ管を通ってリンパ節に転移していきます。
そのため早期発見が重要で、ただちに治療を開始しなければなりませんが、初期はほぼどの癌も痛みを伴わないため、とても気づきにくいとされています。
罹患部位や固体差、癌の進行具合によって症状は様々ですが、進行するにつれて本来柔らかいところが硬く感じたり、白斑、紅斑、粘膜の亀裂、びらん、痂皮形成、腫脹や潰瘍などが見られ痛みを伴い自覚症状がでてきます。
そして舌を動かしにくい、話しづらい等、口腔内の機能にも影響をしていきます。
また、口内炎が2週間以上治らないこのような場合も受診をお勧めします。
舌癌が最も多く、次に下顎の歯肉癌が多いとされていて、女性より男性の方の罹患率が高いです。
原因としては、口腔内の衛生不良の人、虫歯や入れ歯の長期不適合、喫煙、お酒など口腔内に慢性的刺激がある人は発生しやすいとされています。
治療方法は外科療法、放射線療法、化学療法などです。
そのほか、できものの中にはここで紹介していない良性腫瘍などもあります。
もし気になる傷やできものがあれば、早めの受診をおすすめします。
口の中を切った
交通事故、転倒、スポーツ等で口を切ることがあります。
傷口の状態にもよりますが、傷口が小さければ異物を取り除いてから十分な洗浄、消毒を行い、圧迫して止血を行いますが、大きな傷口の場合も傷口が小さいときと同様、異物を取り除き、十分な洗浄と消毒を行い、血が止まらなかったり、食事が困難になる可能性があるので縫合をしていきます。
舌にできる症状別トラブル・舌が痛い
舌が痛い原因には口腔内の要因もあれば、全身的な要因、精神的な要因もあり様々です。
中には要注意なものあります。ここではいくつかの主な原因をみていきたいと思います。
唾液の分泌量低下
唾液の分泌量が低下すると、舌では舌表面を覆う舌乳頭が小さくなったり消失したりするので、本来、少しざらざらしている舌が平ら(ピカピカ、テカテカ)な舌になり、ピリピリとした刺激痛を感じやすくなります。
特に女性は加齢に伴い唾液の分泌が低下しやすいと言われています。
規則正しい生活、良く噛む、ストレスをためない等の生活習慣の見直しや対症療法としては、人口唾液、保湿ジェル、唾液分泌を促す薬、筋機能療法などさまざまです。
・関連疾患
ドライマウス、シェーグレン症候群、薬の副作用、放射線治療等
被せもの、詰め物、入れ歯などの刺激
被せもの、詰め物、入れ歯などに尖っているところや、合っていないところがあると、口を動かしたときに舌がふれて痛みを感じます。
歯科医院にて、気になるところを伝え、尖ってあたるところを丸めてもらいましょう。必要があれば、新しいものにつくりかえましょう。
舌炎
(炎症を起こした舌)
いろいろな関連疾患によって舌炎を引き起こします。
・鉄欠乏
鉄欠乏性貧血により舌乳頭が小さくなり、赤い平らな舌になります(プランマービンソン症候群)
・ビタミンB12、葉酸欠乏
胃の切除後あるいはビタミンB12、葉酸欠乏による悪性貧血が原因で起こる慢性表在性舌炎
(ハンター舌炎)
・亜鉛不足
亜鉛は生体内にある新陳代謝に関与します。
欠乏すると、舌乳頭に付属する舌の味覚センサーの味蕾細胞の若返りサイクルに障害をおこしてしまいます。
・舌炎を引き起こす関連疾患
口腔カンジダ症、口腔扁平苔癬、白板症、アフタ性口内炎、ヘルペス性歯肉口内炎、天疱瘡や帯状疱疹、口腔乾燥症、シェーグレン症候群などで舌に炎症をおこします。
舌癌
癌の進行で舌に分布する知覚神経を刺激した際に痛みを感じます。
早急に治療を開始しないと命に関わってきます。口腔癌のところを参照ください。
舌に関連する血管の異常
舌下動脈の硬化や舌下面に静脈瘤があると痛みを感じることがあります。
神経痛
・三叉神経痛
何らかの誘発原因により、数秒から数分間の短い時間に三叉神経の領域内で、突発的な鋭い痛みを感じます。
舌は下顎神経の枝に属し、下顎神経に神経痛が生じると舌体部に痛みを感じます。
・舌咽神経痛
痛みの性状は三叉神経痛と同様、突発的な鋭い痛みを感じ、舌の痛みは咽頭付近の舌根部になります。
舌痛症
舌に異常は認められませんが、舌の先端や舌縁にピリピリとした痛みを感じます。精神的要因も関連しているとされています。
舌にできる症状別トラブル・舌がただれる
地図状舌(ちずじょうぜつ)
名前のように、地図のような模様を呈する舌を示します。
一つから多数の円形や半円形の淡い赤色斑が生じその周囲は白く縁どられ、地図のようなまだらな模様ができます。
赤い部位は舌表面に覆う乳頭の角化が薄くなった部位で、刺激を感じやすく、その周囲の白い部分は角化が亢進されている部位となります。地図の模様は数時間~日により変化をします。
原因は不明ですが、女性に多くみられ、ストレスにより生じることが報告されています。
大半は、自覚症状はなく治療の必要はありませんが、刺激痛があり気になる場合は、消炎剤を含む含嗽薬を使用するなど対症療法を行います。
舌にできる症状別トラブル・舌が黒い
黒毛舌
舌表面を覆う糸状乳頭の角化が著しく亢進して一部分が伸び、それが黒褐色になっている状態の舌です。
抗生物質等、長期の薬服用から、口腔内の微生物間のバランスが崩れています。
抗生物質は口腔常在菌の一つであるカンジタ菌には効かないため、増殖し他の弱い菌をなくしてしまうため、カンジタが増えた結果、揮発性硫黄化合物が生じ血中成分と結合し、舌が黒色になると考えられています。
治療法は現在服用中の抗生物質があれば、主治医に抗生物質がやめられるのか相談し、やめられるのであれば、服用をやめることで大半は改善がみられます。
舌にできる症状別トラブル・舌がしびれる
三叉神経麻痺
舌の感覚を支配する舌神経は三叉神経の枝です。
三叉神経の中枢部から末梢部である舌までの間で何らかの異常があった場合に舌にしびれを感じます。
原因としては、腫瘍、外傷、親知らずの抜歯に関わるトラブル等が挙げられます。
初期治療が重要で、ステロイドホルモンやビタミンB12などを内服、星状神経節ブロックが有効とされています。
口の症状別トラブル・味覚障害
味覚には甘味、酸味、塩味、苦味、うま味があります。
これらの味を感じにくくなったり、もしくは全く味を感じない、何を食べても異様な味がする、何も食べていないのに舌の先で味を感じる等、このような症状は味覚障害です。
味覚症状が起きる原因はさまざまで、原因に対して、それぞれにあう治療を行います。
味覚障害がおこる原因
・口腔内の原因では、唾液の分泌が低下
唾液は味覚のセンサーである舌表面に分布している味蕾を物理的刺激から守るだけでなく、舌につく細菌の増殖を抑えてくれるため舌炎の予防にも関与しています。
しかし、唾液の分泌が低下することで、物理的刺激から保護することができず刺激によって味蕾の減少や萎縮をまねいてしまいます。
また、細菌の増殖を引き起こした結果、舌表面に口腔カンジタ症のように舌に炎症を起こすことから、味蕾の減少や萎縮をまねき味覚障害になりやすくなります。唾液の分泌低下は加齢やシェーグレン症候群罹患の人によくみられます。
・味覚に関連する神経の損傷・障害・神経の損傷
味覚に関与する神経は、顔面神経の枝の鼓索神経、大錐体神経と舌咽神経、迷走神経です。
末梢部の神経に限らず、中枢部の神経が関与する脳血管障害や、頭部損傷、顔面神経麻痺等では味覚障害を引き起こすことがあります。
・薬の副作用やがん治療
降圧剤、抗生物質、抗アレルギー剤、トランキライザー等で味覚障害があらわれることがあります。
また、癌治療で頭頸部の放射線治療を行っている方にもあらわれます。
・亜鉛不足
亜鉛は生体内の新陳代謝に関与します。
亜鉛不足になると、舌の味覚センサーである味蕾細胞の若返りのサイクルの障害をおこしてしまいます。
・全身疾患
糖尿病、高血圧、貧血(鉄欠乏性貧血、悪性貧血)、甲状腺機能低下症など。
・鼻疾患の人
・心的問題
舌のトラブルには全身的疾患の関連も強く、場合によっては医科との連携も行います。
気になる症状があれば、まずは受診をおすすめします!
喉の奥が腫れるトラブル
痛みがあれば、扁桃炎、咽頭炎の可能性が考えられます。
痛みもなく腫れてきた場合、腫瘍などの可能性がありますので受診をおすすめします。
食べるとき上手くのみ込めないトラブル
乳幼児の場合、離乳食が始まると、呑み込む・食べる練習が始まります。
歯の本数に応じて、食べ物の形状、硬さを工夫して、噛む練習、のみ込む練習をしていきましょう。
成人では精神的要因、口腔乾燥症、顔面神経麻痺等の疾患が関連して、のみこめない場合もあります。
また、脳血管障害等の後遺症や高齢者の方では多くの人に摂食嚥下障害がみられます。
摂食嚥下とは(せっしょくえんげ)
食事をするとき、人は食べ物を認識して、呑み込みやすくするために、歯でかみ砕き、ある程度の食塊をつくり、口の中から胃へ食塊を送り込みます。
この一連の流れを摂食・嚥下と呼んでいます。
この摂食・嚥下は5つのステージに分類されています。
・先行期 目で見て食べ物を認知します
・準備期 食べ物を口の中に入れてよく噛みます
・口腔期 舌が食べ物を後ろ側に送り込みます
・咽頭期 食べ物が咽頭を通過します
・食道期 食べ物が食道を通過します
うまく呑み込めない場合は、このどこかのステージで、何らかの原因により正常に機能していないところがあると考えられます。
そして、この一連の流れに障害がある摂食嚥下障害の多くは脳血管障害の方や高齢者の方に見られます。
口腔内、咽頭部周辺の多くの筋肉や靭帯等の器官や呑み込むために必要な反射作用が関連しています。
食べ物を咽頭に送り込むために、食塊を作りますが、良く噛めなかったり、唾液の分泌が減っていると、食塊を作ることも難しくなります。
食塊ができたとしても、筋力の低下等で筋肉が働かない状態であると食塊をうまく咽頭部へ送り込めません。
また、食道や気管は近接した構造であるので食塊が気管に入らないように、筋肉や他の器官の反射作用によって一時的に気管へ蓋をして、さらに食塊が食道へと進みやすいように筋肉を収縮させます。
この反射がうまくいかないと食塊が気管へ入り、むせを生じ、場合によっては、誤嚥性肺炎を引き起こしてしまいます。
さらにうまく呑み込めないことが続くと低栄養、脱水にもなりやすくなります。
5つのステージでどこが悪いのかを調べることで治療法も変わってきます。
現在日本では死因第4位の肺炎で亡くなる人が年間12万人を超えています。
そして高齢者の肺炎を引き起こす主な原因は誤嚥性肺炎だと言われています。摂食嚥下障害の治療や口腔ケアが誤嚥性肺炎の予防へとつながっていきます。
歯科医院で、口や喉に異常がないかをまず診察をしてもらい、気になる方は摂食嚥下に関する相談をしてみましょう。
まとめ
早急な治療を必要とするもの、早急とまではいかないけれど、専門的診断、治療が必要なものなどお口の病気は実にさまざまです。
早急な治療を要する口腔癌は、はじめは痛みがなく進行するので、気づいたときには進行していることがよくあります。
そうならないためにも、日頃から、歯や歯肉だけでなく、舌や頬粘膜などにも目をむけておくことが重要です。
ここで紹介した病気があることを知っておくだけでも、いざ何かあったときに役に立つはずです。
そして治りが遅い、気になることは自分で判断せず、まずは歯科医院へ足を運んでみましょう。
浜田 甲子
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