唾液は口腔内において大変重要な役割を果たします。
また全身の健康にも欠かせないため、常に唾液を分泌させておく必要があります。
唾液は汚いと思われてしまうかもしれませんが、今回は唾液の重要性について考えてみたいと思います。
唾液の分泌と成分について
まず唾液について知っておく必要があります。
唾液は大唾液腺と言われる3つの腺と、小唾液腺から分泌されています。3つの大唾液腺はそれぞれ「耳下腺」「顎下腺」「舌下線」から成り立っており、主に漿液性の成分から成り立っています。
小唾液腺は、口唇腺、臼歯腺、口蓋腺、舌腺、舌口蓋腺があり、主に粘液性の唾液を分泌します。
唾液の一日平均分泌量はおよそ1~1.5ℓと言われ、pH値は6.3~6.8とされています。
唾液には様々な成分が含まれており、口腔内の状態を正常に保つ役割や、口腔粘膜などの乾燥を防ぎ、咀嚼や嚥下などの運動を助ける役割があります。
また食べ物と混ざり合うことで消化を助け、胃腸の負担を軽減する役目も持っています。
口腔内における唾液の役割
では唾液は、歯や口腔内にとってどんな役目をするのか、主に口の中に対する役割に焦点を当てて、具体的に説明していきましょう。
口腔内を中性に戻し、歯の再石灰化を促す
歯の表面を覆っているエナメル質は、飲食のたびに少しずつ溶けていきます。
歯は酸に弱い性質で、食後の口の中は酸性に傾いておりそのまま酸性の状態が続くと、カルシウムやリンなどといったミネラル成分が流れ、歯の表面が白っぽく濁ってしまいます。
これを「脱灰」と呼び、脱灰が続くとさらにエナメル質が溶け、やがて虫歯へと進行してしまいます。
唾液には酸性を中和させる作用があり、酸性の口の中を中性に戻す作用があります。これは唾液中に含まれる「重炭酸塩イオン」という物質が酸性を中和させることで、口腔内を中性にします。
また唾液には、脱灰により失ったミネラルを補給し、脱灰前の状態に戻す「再石灰化」の作用があります。
私たちの歯は脱灰と再石灰化を繰り返していますが、唾液は再石灰化に欠かせない、非常に大切な役割を持っているのです。
細菌を洗い流し、口腔内の細菌をコントロールする
口腔内には非常に多くの細菌が存在し、ミュータンス菌をはじめとする虫歯菌や歯周病菌などをはじめとした歯や口腔内に対し有害な細菌の他、特別に悪いことをしない日和見菌なども常駐しています。
唾液はこのような有害物質を希釈して害がないようにする抗菌作用を持っています。
抗菌作用として含まれる成分はラクトフェリン、リゾチームなどがあり、口腔内の細菌叢をコントロールする働きがあります。
食べ物が口腔内に溜まるのを防ぐ
食べかすが歯の間や舌下などに溜まることにより、プラークが形成されてしまいます。
プラークは、虫歯菌が食べかすに含まれる糖分などをエサにして酸を作り出し、歯を溶かすことで虫歯になります。
このため、食べかすが口の中に溜まらないようにする必要があります。
唾液には食べかすを洗い流す作用があるため、プラーク形成の原因をある程度取り除くことができます。
ペリクルの生成
ペリクルとは、歯の表面を覆っている薄い膜で、唾液の糖タンパクから作られています。
ペリクルは、虫歯菌などの細菌が作り出す酸から脱灰を遅らせ、脱灰により歯に必要不可欠なミネラル分の流出を抑える働きがあります。
このように、唾液は口腔内の健康になくてはならない、とても大切な成分なのです。
唾液が減少し、口腔乾燥が起きることによる影響とは
では唾液が少なくなり、口の中が乾燥すると、口腔内にどんな影響が出てしまうのでしょうか。
口腔内のpH値バランスが崩れる
唾液は、食後の口腔内のpH値を酸性から中和し、バランスを保つ役割があります。唾液分泌が少なくなると口腔内が中和されず、酸性状態から戻りにくくなります。
その結果、ペリクル再生がなかなか行われず、再石灰化に大きな影響が出てしまいます。
歯が溶け続け、やがて虫歯に進行するリスクが非常に高まります。酸性度の強い飲食物を好む人は、虫歯でなくとも歯が溶けてしまう酸蝕症になってしまう可能性があります。
このように、唾液が少なくなると、口腔内のpH値のバランスが崩れ、歯のトラブルを引き起こしてしまいます。
虫歯や歯周病のリスクが高くなる
唾液が少なくなると食べかすが口腔内に残りやすくなり、やがてその食べかすをエサとしてプラークが形成され始めます。
プラークは虫歯菌や歯周病菌の棲家となり、そこから虫歯菌の場合は酸を出して歯を溶かし、歯周病菌は歯肉を攻撃し始めます。
口腔内の細菌が増殖し、口臭の原因になる
唾液の量が減少すると、口の中が乾燥し、細菌が増殖します。
唾液には細菌の量をコントロールする作用がありますが、唾液が少なくなると細菌が増え、口臭の原因となってしまいます。
口腔内の細菌が増殖し、口腔カンジダ症などを発症しやすくなる
口腔内にカンジダ菌という菌が増殖して起きるトラブルです。
これまでは高齢者や免疫力の低下により引き起こされると言われてきましたが、最近では唾液分泌量の低下が大きな要因と考えられています。
なお口腔カンジダ症はカビによる細菌感染のため、抗菌剤投与をはじめとした処置が必要になります。
その他唾液は咀嚼した食べ物と混ざり合って胃に送り込み、消化を助ける役目があります。
しかし唾液とあまり混ざり合わない場合、胃腸に負担がかかり、消化不良を起こしやすいという内臓面にも大きな影響が出てしまいます。
唾液が少なくなる原因とは
ではなぜ唾液が少なくなるのでしょうか。唾液分泌の減少の理由は、次のことが考えられます。
口呼吸
鼻詰まりなどが原因で鼻呼吸ができず、口で呼吸をする口呼吸は唾液が乾き、口腔内の乾燥を招きます。
よく噛まない
よく噛むことで、唾液はたくさん分泌されます。
しかしよく噛まずに食事をすると、唾液がしっかり分泌されません。特に早食いの人はその傾向が強いようです。
過度の緊張、強いストレス
緊張すると口が渇くことはありませんか?
唾液分泌は自律神経によりコントロールされていますが、緊張が続くことや強いストレス、イライラなどで自律神経のバランスが崩れてしまうと、唾液の量が減ってしまいます。
加齢
加齢とともに舌や口周りの筋肉が衰え、噛む力が落ちてきます。
よく噛まないと唾液は分泌されにくいため、年齢とともに噛む力が衰えることと唾液分泌量の減少は比例しやすいと言えるでしょう。
喫煙
喫煙は歯周病などに悪影響がある他、唾液分泌も少なくします。
タバコに含まれるニコチンが血管を収縮させて血行を悪くし、唾液の分泌を少なくさせてしまいます。
薬の副作用によるもの
薬を服用することにより、その副作用で唾液の量が少なくなり、口の中がカラカラになってしまうことがあります。
水分をしっかり摂ることが望ましいですが、病気の内容によっては水分摂取に制限がある場合もあります。担当医に相談するようにして下さい。
唾液分泌を活発にさせるために
歯や口腔内にとって、唾液は非常に重要です。
唾液をしっかりと出すためにも、次のことを意識してみましょう。
よく噛んで食べる
唾液分泌に関する、基本中の基本です。
よく噛んで食べることで唾液分泌を促進し、咀嚼力をアップさせ、消化を助けます。
早食いの傾向のある人や、高齢の方は特に意識してよく噛むようにしましょう。
キシリトール入りガムを噛む
しっかり噛むことで、唾液分泌を促進します。
キシリトールガムなら虫歯になる心配はありません。
口呼吸を改善する
口で呼吸を行う癖のある人は、鼻呼吸に変えるようにしましょう。
口呼吸による悪影響はたくさんあります。意識して鼻呼吸を行い、口の中の乾燥を防ぐようにしましょう。
唾液をしっかり出し、お口の中の健康を守りましょう
唾液の重要性についてお話しました。唾液が減ってしまうと、口腔内に色々な問題が生じてきます。
またそのことが、全身の健康にも関わってくるため、意識して唾液を分泌させるように心がけてください。
麻美 とうこ
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